???「ほーら、ストレッチパワーが溜まってきただろう・・・?」「にーい」 ドーン! あれなんなんだよwwww ワロタ 笑わせんなwwwwwwwww 一人は台座の上に手足を広げ拘束されている男 もう一人は奇妙な服装をし、頭が妙に尖った人間…いや、人間の頭はこれ程尖っていただろうか お前「…ここはどこだ、何するつもりだ!」 ???「君が知る必要はない事だ」 奇妙な人間は男の問いに対し、答えになっていない答えを返す そして細々と動かしていた手を止め、男に振り向いた ???「…さぁ時間だ、腕から力を抜くんだ」 その奇妙な人間の手には複雑な形をした注射器が握られていた 動けない男の腕を掴み、ゆっくりと針を差し込む そして中の液体を静かに、そして確実に男の血管に流し込んだ お前「っ…!や、やめろ!…おいっ!」 しばらくし、男は自分の体に強い違和感を覚えた 心臓が大きく脈動し、筋肉が張り裂けるような痛みを訴える お前「…ぐっ!?何だ…これ…っ!?」 ???「ほーら、ストレッチパワーが溜まってきただろう…?」 その瞳には期待と喜びに輝いていた お前「ぐあぁぁぁあああっ!熱いっ!熱い熱い熱いああああぁぁぁぁ!」 ???「安心しろ、その薬はお前を殺すような物じゃない」 お前「安心できるかボケェェェエエエッ!」 男はその苦痛から逃れるために悪態を吐く 激しい頭痛、収縮する血管、先ほどまでの不安を全身の不快感が塗りつぶした ???「そろそろか」 ???「…新しいストレッチマンの誕生だ!」 ?「立て、ストレッチマン、今のお前にその拘束具は紙切れ同然だ」」 お前「ぐ、う…」 ストレッチマンと呼ばれた男はゆっくりと体を起こす 謎の薬品に犯された肉体が悲鳴を上げているのを男はありありと感じた しかしそれを否定するように体を固定していた皮のベルトが弾け飛ぶ お前「なんだ…これ…俺はどうなって…」 ?「驚いたろう?ストレッチパワーがお前の真の力を引き出したんだ」 お前「何…言ってるんだ、ストレッチパワーって何なんだ…」 ?「お前にその喜びを教える薬を入れた、どうだ?今の気分は」 お前「…悪く、はないな」 そう、先ほどまで男の全身を支配していた不快感がいつの間にか消えていた それどころかどこかの筋肉一つ動かすだけで仄かな快感が零れ落ちる お前「でも何で俺を…お前の目的はこれだったのか?」 ?「お前を選んだのはその資格があったからだ、ストレッチマンになる資格だ」 奇妙な人間は男に背を向けて機材の片付けを始める ――よく見ればアキレス腱を伸ばす体操を並行して お前「ストレッチマンになる…資格?」 ?「お前に世界を救って貰う」 お前「は…?俺が、世界を救う?」 ?「そうだ、お前はニートだから死んでも誰も悲しまないからな」 辛辣な言葉が男の心に突き刺さる、先ほどの高揚感が嘘のように消えた 心なしか筋肉も萎みがちだ ?「そう落ち込むな!これからお前は変わるんだ、ストレッチマンとしてな」 お前「いや、ストレッチマンってなんだよ」 ?「お前はNHK見てなかったのか?ストレッチマンは――」 どうやら奇妙な人間も同様らしく、元々の渋い顔をさらに渋める お前「うおっ!筋肉痛っ!」 ?「む…どうやら来たようだな」 ?「さぁ、急いでこれに着替えろ、そのスーツはお前を筋肉痛から守ってくれる」 奇妙な人間が差し出したのは…奇妙な人間の着ている物と同一の物だった お前「え、これはちょっと…」 ?「そうか、着たくないならそれでいい、着る服は個人の自由だ」 ?「…ここから南東にある施設、そこに向かってくれ、そしてお前の力を振りかざしてみろ」 ?「歩いてというか跳んでいける距離だな」 お前「え?飛べんの!?ストレッチマンって飛べるのか!?」 ?「あぁ跳べるぞ、大体400メートルの距離だ」 その時奇妙な人間の顔が曇る 同時に男の筋肉痛が和らいできたが僅かな痺れを感じる ?「すでに死人が出ているようだ、急いで向かってくれ」 お前「死人って…一体どうすればいいんだ?ストレッチパワーで治すのか?」 ?「行けば分かる…さぁ跳べ!足の筋肉にストレッチパワーを溜めろ!」 ?「足に集中、イメージしろ、お前の筋肉の脈動を感じ取れ!」 ?「来てる…来てるぞ!ストレッチパワーがお前の足に…」 ?「今だ!」 その瞬間一人の男が地下室の天井を貫いた 逃げ惑う子供、隠れる職員、千切れ飛ぶ肉塊、踏みつけられる死体 この平和な国では地獄と言える場所であった 怪物「ふん…順調だな…順調過ぎる」 職員「ゆ、許してください…何でもしますから…何でも――」 怪物「じゃあ死んでくれ」 口から漏れる悲鳴を肉が潰れる雑音がかき消す 怪物「大体こんなもんか…後は追い詰めたガキ共を――!?」 怪物の背後で何かが爆発するような音が響いた 振り向けばそこに奴が居た、頭から血を流した奴が居た 服を土と血で彩り、屈伸体操をしているかのようにしゃがみ込んだ男 先ほどまで居なかった人間が爆音と共に現れたのだ 怪物「き、貴様…!」 怪物「頭から血が出ているぞ?」 お前「!変なきぐるみ着た奴から心配されただと!?」 怪物「きぐるみじゃないな、これは地球内行動スーツ…ST-500型だ」 怪物「…そんな事はどうでもいい、お前は一般人だろう?死にたくなければ下がっていろ」 その時ようやっと気がついた、男の足元が赤く染まっている事を 見渡せば千切れた上半身、半分に割れた頭、トマトのように潰れている肉 それが人間だった物だと気付くのに何秒掛かった事だろう 怪物「見て分からないか?俺がやったんだよ」 お前「何で…何でこんな事してんだよ…何で殺した!」 普通ならばこんな状況でこれほど強気に喋る人間は多くは無い しかし今の男の心は恐怖や不安より、憎しみ、怒りが上回っていた 怪物「殺す必要があったからだ、それ以上黙っていられないならお前も殺す」 お前「だから何で殺したって聞いて――」 怪物「死ね」 男が轟音と同時に吹き飛ぶ、その衝撃は常人の肉を容易く引き裂き、骨を砕く だが男は原型を留めていた、むしろ膨張した筋肉が男の体を包み込んでいたのだ 怪物「なっ、無傷…?無傷だと!?」 男がゆっくりと立ち上がる、その姿は虎やライオンのように強くしなやかで、ゴリラにも似ていた 怪物はその姿を見てようやっと一つの仮定に辿り着く 怪物「貴様…まさか…!」 男は確かな瞳で目の前の怪物を睨む、足に力を入れ、体を前に倒す 力の込められた足は怪しく蠢き膨らみを増す、もはやそれは怪物と言ってもいい光景だった 怪物「貴様は…!」 男の足が地面を離れる、音がその後を引き、衝撃波を生み出す それを見て怪物の仮定が確信へと変わった、しかし、それに気がつくのが僅かに遅かった 怪物「貴様は…!ストレッチマン!」 そう叫び終えたか否か、男のストレッチパワーが炸裂した 1レスに10分以上掛かってるんだけど そこに無数の死体と子供、そして無残に撲殺された怪物を残して お前「…何だかすごくいい気分」 お前「犯罪者殺したからじゃなくて、筋肉の喜びを感じる」 お前「これがっ…ストレッチパワー…!」 ?「…独り言が多い奴だな」 お前「うおぁおっ!誰だお前!」 ?「私だ、どうやらその力が気に入ったようだな」 お前「まぁ、うん、筋トレ好きな人の気持ち分かった気がする」 着地する際両足を揃え、脱力しながら体を少し捻り、背中で転がる これはある着地法だが、素人がやろうと思ってできる事ではない お前「よっ…と」 しかし男はそれを当たり前かのようにしてみせる もはや男が普通の人間ではない事がおわかりいただけただろうか ?「…見ただろう?あの惨状を」 お前「…」 ?「お前に頼みがある」 お前「地球を救って貰いたい…か?」 お前「…お、俺にしかできないなら…」 ?「いや、お前じゃなくてもできるけど…」 お前「…」 ?「…」 お前「や、やるよ…」 ?「そうか!ありがとう!」 お前「でも、やるからには教えてくれ、俺は一体なんで戦わなきゃいけないんだ」 ?「それは…初代ストレッチマンがここに居るからだ」 ?「あぁ、彼は最高のストレッチマンだった」 ?「だが倒れた…ストレッチパワーの暴走だ、強すぎる力は身を滅ぼす」 ?「怪物達はそれを狙ってるらしい、ストレッチマンの、ストレッチパワーを…」 お前「じゃあさっきの施設に初代マンがいたのか」 ?「いや、どこに居るかまでは詳しくは分からない」 ?「しかし怪物が特定の施設を襲っている事からあの手の施設に居るはずだ」 お前「それなら、初代が地球に居る限り怪物は現れるんじゃ…」 ?「…」 男が改造された所に戻った 奇妙な人間は話をせずにそのまま寝た そして朝が来た ?「あーたーらしーいーあーさがっきた」 ?「きのーうのーあーさーだ」 お前「うるさっ、うるさいやめて」 ?「起きたか、一緒にどうだ?体がウズウズしてきただろう?」 お前「それもそうだな」 男は奇妙な人間と体操した、男の筋肉が喜んだ 昨日と同じ感覚、またしても怪物が現れたようだ お前「この感じ…奴か!」 ?「そのようだな、スーツは着ていくか?」 お前「スーツ着てる場合じゃない!行くぞ!」 ?「いや、私はちょっと…体が弱くて」 先日高層ビルに届くようなジャンプを見せた人間が言うセリフではない お前「兎に角どこだ!?奴はどこにいる!」 ?「北北東に2キロ――昨日の奴とは比べ物にならないぞ」 足を曲げ、体を屈める、ストレッチパワーが溜まるのを確かに感じた ――衝撃、ストレッチパワーが炸裂し、地面を弾いた お前「ぐぅっ…!」 足元にあった景色は急速に小さくなり続け、やがてその速度は遅くなる そしてズームアウトが止まり、ゆっくりと、次第に速度をましてズームインが始まる それを数回繰り返し、目的の施設へ舞い降りた 怪物「貰った!」 お前「うおわっ!」 着地した瞬間、音速の衝撃波が男を襲った 辛うじて防御、間違いなく狙って放たれた物だ お前「俺がストレッチマンだ!」 怪物「お前には用は無い!下がってもらおうか!」 お前「ふん!ストレッチパワーがある限り、悪は見逃せん!」 怪物「悪人を殺して何が悪い!」 怪物が腕を振りぬく、音速で振りぬかれたそれは衝撃波を生み正面にある物をなぎ倒す その大降りの技を見極め男は回避、だがさらに怪人は拳を振りぬいた お前「ぐふぉっ…」 怪人は男の着地点を予測し、そこに衝撃波を放ったのだ 予想外の攻撃、男はそれをモロにくらい吹き飛んだ 怪人「これ以上邪魔するなら死んでもらう、このスーツ…ST-610の力でな」 お前「これで…勝った気になるなよ!」 男が駆ける、それと同時に怪物が腕を振る 迫る衝撃波を回避、さらに怪物の二発目が男に迫った しかしその衝撃波は男に当たることなく地面を穿った 怪物「何っ!?」 お前「お前の技は大振りだ、だから小刻みなステップにはついて来られないだろ?」 そう言いながら小刻みに、変則的に怪物に迫る 事実、先ほどまで空を切っていた衝撃波は男の体を捉えつつあった 距離が縮まるに連れてその威力も増す、接近戦はリスクがとてつもなく大きいのだ 怪物「これで…最後だ!」 怪物が腕を振りかぶる、もはや逃れられない距離 そこまで詰めていた男は小刻みなステップを止め、大きく進んだ 怪物「ぬふぅぅぅうううっ!」 お前「うおおおぉぉぉおおお!」 轟音が響いた、男の拳と怪物の拳がぶつかり合ったのだ 怪物の放つ衝撃波は男の拳に相殺され、行き場をなくし、双方の体を打った お前「おうふ」 気の抜けた呻き、やがて怪物の口は静かになった 男も次第に落ち着いたのか、戦場は静寂に包まれた お前「お前の拳…すごくストレッチパワーだったぜ…」 その時、静寂を甲高い声が破った 子供達「ストレッチマンだー!」 子供達「ストレッチ体操ー!」 子供達「ここにストレッチパワーが溜まってきただろう?」 お前「え、何ちょっと静かにして疲れてるから」 子供達の様子がどこかおかしい さらによく見れば建物の屋上にライフルを持った男が数人いた お前「SAT、とか言う奴か?でも何でこんな所に…」 子供達「遊ぼうよー!」 子供達「ぼぉぼぉぼぉ」 子供達「筋肉痛にさろんぱす」 お前「いや遊ばないし、家帰るし、ちょっと涎つけないで」 怪物「!…ぐぶっ…はぁ…はぁ…」 お前「!?まだ、生きてたのか…!」 怪物「早く…ここから離れろ…!」 怪物「こいつ等は…研究機関の――」 子供達「ストレッチキック!」 次の瞬間、怪物の足が不気味な音を立て圧し折れた 怪物「ぐああぁぁ…っ!」 子供達「ストレッチパンチ!」 子供達「ストレッチチョップ」 子供達「ストッキングカット!」 子供達が怪物に触れるたび、怪物の体は歪み、その度に怪物は呻いた 先ほどまで死力を尽くし戦った相手が、子供に殺された 怪物を蹂躙する事に飽きた子供達は、新しい標的を見つける 子供達「ストレッチマーン!」 子供達「あぞぼうよー」 お前「っ!く、来るなよ…」 子供達「あ゛ぞぼう゛よ゛ー」 お前「来るな…来るなっ!」 子供達「あ゛そ゛ほ゛う゛よ゛」 足が震えているが、これが筋肉痛によるものか、恐怖によるものか、あるいは両方か ?「…なるほど、そんな事があったか」 お前「何で、俺が殺そうとした奴が…」 ?「怪物の目的はストレッチパワーじゃないのかもしれんな…」 お前「俺は…この先どうすれば…」 ?「…取りあえずお前は体を休めろ、傷だらけだぞ?」 お前「分かった…」 ?「冷蔵庫にプロテインが入ってるからな、好きに飲むといい、筋肉が喜ぶぞ」 お前「あぁ…」 ?「あ、ココア味は残して置けよ、私のだ…ってそんなに飲みきれる訳無いか!ふはははは!」 お前「なんでこの人ハイテンションなの」 筋肉が伸び縮みする度に二人の体を快感が満たす ?「ふぅ…、どうだ?ストレッチパワーがここに、溜まってきただろう」 お前「あぁ、最高だ、むしろストレッチパワーが溢れ出てるようだ」 ?「お前もいい顔になってきたな、渋いぞ」 お前「褒めたってストレッチパワーしか出ないぜ?」 ?「ふはははは!面白い事言うじゃないか!」 ?「…そろそろ、どうだ?あのスーツを着てみないか?」 お前「なんでそんなにスーツに拘るんだよ」 お前「じゃあ俺も飲もうかな」 その日はゆっくりと過ごす事が出来た 午前、二人は筋肉を優しく鍛え、午後は厳しく鍛えた 筋肉を動かす喜び、それを再度確かめられた充実した日であった お前「今日は楽しかったね、明日はもっと楽しくなるといいね」 ?「むきっ」 今日が終わる 安心して眠りに着こうかとした時、二人を激しい筋肉痛が襲った お前「ぐおっ!?すごい筋肉痛がっ!今日は鍛えすぎたかな?」 ?「違う!奴が出たんだ!西南西に28キロ!今回は私も行くぞ!」 やがて目的の施設に近付くが、そこはすでに戦場だった 施設の広場がライトで照らされており、血で染められた芝生が醜くも美しい お前「あれか…でも、一体どうすれば…」 ?「まずは止める、それから怪物から聞き出す…、出来るか?」 お前「…俺にしか出来ない事なんだろ?」 ?「え、あ、うん、そうだな」 お前「…」 徐々に近付き、その喧騒が耳に入る 銃声、悲鳴、低い雑音は足音だろうか? 建物の中から時折強い光が見える、怪物は建物の中にいるらしい ?「準備はいいか?」 お前「…少し、待ってくれ…」 ?「分かった」 お前「…ここにもあの子供達がいるんだよな?」 ?「…そうだろうな」 お前「…」 ?「…大丈夫だ、お前なら上手くやれる、だってお前は――」 目の前で、何かが空気を裂いた それは奇妙な人間を打ち、木から落とす 奇妙な人間は衝撃に目を見開き、血を吐いた ?「ぐっ…はっ…」 男の問いに返事は無く、ただ息にならない息をしている 急いで木から降り、抱き上げる、そしてその体の華奢さに驚いた お前「えっ…?おん…な?」 そう、その通りであった 奇妙な人間のスーツはただのスポンジの様で、彼女の体系を惑わしていた 破れたスーツからは皮膚が覗き、滑らかな肌を青いあざが飾っている ?「くっ!…うぅ…」 お前「まさか…お前…」 お前「ストレッチウーマン?」 ストレッチウーマン「娘っ…だ!」 なんという事だ、ストレッチマンには娘が居たのだ しかしそんな事はどうでもいい、男はストレッチウーマンの怪我を調べる だが男には詳しい事は分からなかった お前「…とにかく病院に!」 ストレッチウーマン「待て…お前には、先に…やる事が…」 お前「…」 お前「…分かった、そこで待ってろ」 ストレッチウーマン「あぁ…いい結果を…待ってる、ぞ…」 先ほどの攻撃で追撃が無かった事を見ると、怪物の優先順位はこの中に向いているらしい 一体怪物は何が目的なのか、ストレッチウーマンの父親はどんな人物なのか、疑問が廻る お前「…なんでかなぁ」 怪物「何でだろうなぁ」 お前「!」 突如現れた怪物から距離を取る 油断していたとはいえ、まったくの無防備だった事に焦りを感じる 怪物「そんなに慌てるなよ、邪魔さえして来なければ何もしないぜ」 お前「何もしない…?じゃあどうしてストレッチウーマンを撃った!」 怪物「いや、ストレッチウーマンってなんだよ」 怪物「初代マンの娘…だって?死んだ、のか?」 お前「分からない…でもお前の攻撃が当たったんだぞ!普通死ぬだろ!」 怪物「い、いや、大丈夫だろ…多分」 怪物「仮にも初代マンの娘な訳で…むしろ無傷なんじゃないか…?」 お前「でも血を吐いてたし、青あざ出来てたし」 怪物「いや、でも普通の人間なら死んでるし?即死だし?」 お前「…」 怪物「大丈夫だろ…多分」 怪物「まぁ…うん、多分」 お前「…で、お前達の目的は何だ?何のために人を殺している」 怪物「俺達は友人である初代マンを探しに来てるんだ」 お前「友人…だと?仲間同士殺しあってたのか?」 怪物「お前達人間にはそう見えるかもな…でもこれはただの喧嘩だ」 お前「ただの喧嘩に人を巻き込むな!人が死んでるんだぞ!」 怪物「えぇ…だってこいつ等…」 怪物「人じゃないし」 怪物「だってこいつ等初代マンの血から作られてるんだぜ?」 男はあの施設の子供達を思い出す 怪物を素手で倒し、通常の子供とは違う雰囲気を感じた もしあの子供達が初代ストレッチマンの子供達であれば、なんらおかしくは無いのかもしれない お前「つまり、あの子達は初代の子供だったのか」 怪物「いやいや、それは流石に子沢山過ぎるだろ」 怪物「人間の子供に初代マンの血を入れたって所だろうな…多分」 怪物「まぁこんな小さい子供に入れたら人格崩壊が――」 その時怪物の言葉を遮るように、一つの銃声が響いた 怪物「…なんだ?まだ生き残りがいたか」 お前「お前…どうしてここに…!」 怪物と男の前に現れた人物はまるで、ごく普通の服をきたストレッチウーマンであった 金田ニク「私は金田ニク、初代ストレッチマンの娘よ」 怪物「お前が…初代マンの娘…名前は酷いが随分可愛く育ったな」 金田ニク「黙れゲテモノ!お父さんに貰った名前を馬鹿にするな!」 怪物「oh…」 お前「だ、大丈夫なのか…?その格好、どうして…」 ?「そいつから離れるんだ!」 怪物「!分身の術だと!?」 その場には同じ顔をした人間がいた とても整った顔をしているが、その渋い表情がそれを台無しにしている ウーマン「そいつから離れろ…そいつは筋肉を駄目にする…!」 ニク「失礼な…私はお父さんのような筋肉を愛してます、お姉さんだって…」 ウーマン「違う!筋肉はすべからく素晴らしい!筋肉は同じじゃないから素晴らしいんだ!」 怪物「…そうか、そういう事か!」 お前「何か知ってるのかゲテモノ!」 怪物「美的感覚が違うからってその呼び方止めろよマジで」 お前「…そうだっけ」 怪物「でも、どれも中途半端だったんだ、ここに居た全員が」 ニク「…そうです、その通りですよ」 ニク「ここに居た子供達には私の血を入れました…私の尖兵にするために!」 お前「…そうか、薄まった血がストレッチマンでも人間でもない存在にしたのか」 ウーマン「よくも…よくも無関係な子供達を!許さん!」 ニク「ふふっ!そんな半端なストレッチパワー…」 ウーマンとニクがぶつかり合った お互いのストレッチパワーが目視できるかのように空気が歪む ウーマン「甘い」 がっちりと手を組み合った状態からニクが膝蹴りを出す それウーマンは足で払う ニク「ちっ!」 足払いされる事を恐れてニクが下がる、それを追うウーマン しばらくそんな状態が続き、ウーマンが優勢に見えた が、時が経つにつれそれが変わる ウーマン「くっ…はぁっ!」 ニク「おっと…ふふっ、もう疲れたんですか?ちゃんと鍛えてます?」 負傷しているウーマンにスタミナは残っていなかった 長期戦は勝ち目が無い、それを知ってウーマンは全力を出していたのだ お前「まずい、このままじゃウーマンが…」 怪物「でも姉妹喧嘩みたいだし手を出しちゃ駄目なんじゃね?」 お前「もう喧嘩じゃないだろ!これは殺し合いだぞ!」 怪物「部外者が手を出すな!ストレッチウーマンはお前に助けろって言ったか!?」 お前「くっ…」 その時背後で轟音が響く ニクがウーマンを繰り返し投げ飛ばす、それは優雅で、強引で ついに二人の戦いが大きく逆転したのだ ニク「お姉さんのっ!筋肉はっ!美しくっ!ないっ!」 もはやウーマンに抵抗は無く、ただ叩きつけられる衝撃に身を丸めるだけだ ニクの方も疲れが出てきたらしく、息を荒げるが、勝敗は決まったも同然であった ニク「やっぱりどうも…肉弾戦では、殺しきれないみたいですね…」 ウーマン「この筋肉が有る限り…お前にだけは負けん!」 お互いが拳を引き、息を整える その体勢は以前男が戦った怪物が最後の衝撃波を出す姿に似ていた 二人の全身にストレッチパワーが溜まり、開放は今か今かと待ちわびている お前「止めろ!これ以上はどっちも持たないぞ!」 ウーマン「こいつを倒す!今ここで倒さなければならない!」 ニク「その通り!邪魔者はその場で殺すのみよ!」 ストレッチパワーは殺し合うための力じゃない、人生を飾るための力なのだ ウーマン「…消えろっ!」 ニク「砕け散れっ!」 お前「やぁぁぁめぇぇぇろぉぉおお!」 二つの衝撃波が男を襲った 男の筋肉が震え、男を守るために膨れ上がる しかしそれをあざ笑うかのように力の壁が男を挟む お前「ぐぁぁぁあああっ!」 ウーマン「男!?」 ニク「な、なんで!?そんな事したら…」 怪物「無茶だ!死ぬ気かよ!」 憎しみが篭ったストレッチパワーは意志を持ったかのように衝撃波を異質の物に変えたのだ お前「ぐぅぅぅ…っ」 男の筋肉、骨、全身が悲鳴を上げる 少しでも気を抜けば内臓は押しつぶれ、頭蓋骨は割れて脳が飛び出すだろう だが男は怯まない、彼のストレッチパワーは健在だった お前「うぉぉぉおおお!」 男の全身にストレッチパワーが溜まる 男の心の中は、『殺した怪物に悪い事したかな』な気持ちで溢れていた 衝撃波の威力は一層増すが、それに対抗するかのようにストレッチパワーが増す お前「ほーら…っ!ここに…!ストレッチパワーが、溜まってきただろう…っ?」 それでも男はその間に立ち、それを圧倒していた 彼の筋肉は――そう、美しかった ウーマン「男…」 ニク「そんな…お父さん以外にこんな筋肉があったなんて…」 怪物「作られたストレッチマン…アイツはその壁を乗り越えるつもりか…」 その時、衝撃波が弾けた 限界まで圧縮された異質な衝撃波が最後の足掻きを見せたのだ 爆風を三人を襲う、床は割れ、天井は裂けた その猛烈な爆風の中で、男の雄叫びが微かに聞こえた ニク「…」 怪物「…」 三人が一人を囲んでいた 囲まれた人物は傷だらけで、埃だらけで、しかし少し微笑んでいた ウーマン「…お前の筋肉、素晴らしかった、お前を選んでよかった」 ニク「本当に、美しかったです…もう少し早く貴方に出会えていれば…」 怪物「お前のような筋肉、初代マン以来だ…」 三人は返事をしないであろう人物にずっと語りかける ニク「もう…この筋肉は見られないんでしょうか…」 怪物「…こんな時、あいつがいれば…」 ?「待たせたな!」 背後から待ってました、と言わんばかりの声を投げかけられた その声は力強く、優しいく、そして渋い ウーマン「!」 ニク「お父さん!」 怪物「げぇ!初代マン!」 初代ストレッチマン「失せろゲテモノ!」 怪物「ぐわぁぁぁあああ!」 初代「分かっている、みんな離れろ、ストレッチパワーを集中させる」 初代は男の上に立ち、屈伸を始めた その度に男の体は苦しそうに揺れる揺れる やがて初代は男の胸に足を乗せ、アキレス腱を伸ばす ニク「お父さん、何だが残酷な光景だよ」 初代「大丈夫、すぐに終わるから」 初代が強く足を踏み込む するとどうだろう、停止していた男の心臓がストレッチパワー、筋肉を動かす喜びに包まれる 初代「ほーら、ストレッチパワーが溜まってきただろう…?」 男の心臓は止まっている事に苦痛を感じ、それから逃れるために僅かに動く ストレッチパワーに刺激された心臓はもう止まらない、熱いビートが体に響く 男「うっ…苦しっ」 おもしろい しかし、ウーマン達が出る訳ではない 次々に出る筋肉達は美しく引き締まっており、どれも綺麗だから仕方ないね ウーマン「…そろそろだな」 ニク「ふふっ、あれから一年、久しぶりにあの筋肉が見られるわ」 怪物「まぁ見ようと思えば何とか見れたけど…」 男「そろそろ出る頃なんじゃないか?」 暫くすると先ほどまでポーズを決めた筋肉達がステージから下がる それを合図に新しい筋肉達が現れる 観客からの黄色い歓声、審査員も心なしか身を乗り出している 四人の、よく知った筋肉がそこにいた アナウンス「えー、それでは37番…初代ストレッチマンさん」 完 途中辛さが上回ったけどな >>全てを読む(-1001) >>直接開く 前100 次100 最新50 投票にご協力を! 関連するスレ・???「1億円」 俺「ん?」 かよちゃんを救う会「1億円集まったがあと一ヶ月でもう1億5000万円必要だ。あくしろ糞JAPが」 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